控訴審勝利「東京集会・デモ行進」 成功裡に終わりました。
  
2023年1月22日(日) 日比谷図書館コンベンションホール

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 主催者あいさつ

 東海第二原発運転差止訴訟原告団共同代表  大石光伸


 みなさん、こんにちは。原告団共同代表の大石です。今日は東海第二原発控訴審勝利に向けてお集まりいただきありがとうございます。
 政府・岸田政権は福島第一原発事故からわずか12年で再び原発回帰を打ち出しました。

〇最初に申し上げたいのは、ふるさとを追われ、くらしを奪われ、人生を狂わされた福島のみなさんの犠牲と困難は今も続いており、回復されていないということです。政府はエネルギー安定供給などという理由をつけて、わずか12年でいとも簡単に「なかったこと」のように語る。被害者への思いなどひとかけらもなく、すべては電力会社の要求によって既存の原発を使い倒して利益を確保したいということを法律を改正してでも実現させようとする政府の姿勢に他なりません。国民の安全や平和なくらしより企業の利益実現、諸悪の根源は、歴史を反省しない、教訓にできない政府の姿勢にあります。
 福島のみなさんは「私たちで終わりにしてほしい。二度と国民が同じ目に遭わないで欲しい」と願ってきました。わずか12年で再び原発に回帰する。福島の皆さんの目を見て話せますか。これではまた再び被害が繰り返されます。次は私たち、被害を受けるのは次の子どもたちです。
 東海第二原発の裁判でも、訴状から意見陳述まで「この裁判は同じ国民として福島のみなさんの思いと共にある」ことを繰り返し裁判長にも語ってきました。
 あの困難を重く受け止めて共有することが私たちの裁判での原点です。
 多くの先輩たちが「核の平和利用」の欺瞞性、原子力発電の危険性に対して警鐘を発し続けていたのを無視して、とうとう2011年福島第一原発事故として現実になってしまいました。
 戦後最大の公害事件を起こして、この日本社会は大きな反省と教訓から脱原発で新たな道に転換するかと思われたものの、今ふたたび政府と電力会社のムラが結託してゾンビのように復活しようとしています。
 歴史の犠牲と教訓を忘れることは、再び戦争をしかねない国になろうとしていることとも軌を一にしています。

〇思うに、この12年間は、福島第一原発事故の国民被害と犠牲を歴史の重い教訓として受け止めた多くの国民と、事故が起きたら総無責任体制で逃げ隠れした彼らとの攻防の12年だったかと思います。被害者への謝罪と賠償、責任の明確化、そして原発をもう無くすこと。全国に広がる脱原発の声とともに、被害者の賠償請求訴訟、国賠訴訟、刑事責任を明確にする刑事裁判、そして運転差止訴訟の運動でした。
 事故後に徹底してその芽を叩き潰すことができなかった国民の弱さはあるかと思いますが、これらの闘いなくしては、事の真実・・・原発事故が人災であったこと、利益のために安全対策を怠ったこと、国が電力に安全対策を徹底しなかったこと、など事実さえ明らかにされなかったでしょう。その社会的責任を明確にして歴史に刻むことはまだ途上です。だから彼らが再び頭をもたげて来たとも言えるし、裏を返せば、彼らは追い詰められて焦っているからもう一度原発を再生させるには今しかないと考えたとも言えます。

〇さて、ご存じの通り、一昨年3月の水戸地裁判決は「福島第一原発事故を教訓とするならば第1から第5の防護レベルのなかの一つでも不十分であれば運転を認めることはできない。第5の避難計画とその体制があると言うにはほど遠い。従って運転してはならない」という判決でした。
 地元の裁判所が、福島原発事故をしっかと教訓にして住民の生命身体への危険の可能性を明確にしたことは住民にとっては常識的であたりまえの判決ですが、司法にとっては福島事故後の裁判を象徴する判断だったようです。すなわち福島事故での福島の住民の被害を念頭において、「科学技術論争よりも、住民にとって最後まで被ばく・被害を回避できるのか」、これでは住民の安全を守れないと判断していることは新しい判断だったようです。
 これに対して、国の動きを忖度した判決が昨年12月20日の大阪地裁の関西電力美浜3号の判決で、「人格権侵害の具体的危険が存在するか否かにおいて、第1 から第4 までの各防護レベルの存在を捨象して、無条件に放射性物質の異常放出が生ずるとの前提を置くことは相当ではなく、本件では、債権者らが避難を要するような事態が発生する具体的危険について十分な疎明があるとはいえないから、債権者らの主張は前提を欠くというべきである。しかも、本件発電所についての避難計画に不備があるとも認められない。」というものです。政府の動きと軌を一にしています。

〇私たちは、この住民目線の水戸地裁判決の判断の枠組みを高裁でも勝ち取ることを目指します。
 しかし、国に忖度する東京高裁は、この判決をひっくり返そうと手ぐすね引いて待っているだけでなく、東海第二を担当する民事21部の裁判長に、これまで法務省で国が訴えられた裁判を指揮監督していた人間を送り込んできました。
 しかも一審水戸地裁での被告国側の主張にも関与していたことが判明しています。 これは「片方の監督が審判になる」ようなものです。最高裁による人事とは国の人事介入であることは明らかです。

〇東海第二の控訴審はまずこの人事介入に対して「公正中立な裁判を求める」闘いから始まります。東電刑事裁判で原告の方が「加害者との闘いでなくて司法との闘いのようだ」と言っておられましたが、東海第二控訴審もそこから始まります。
 原告団・弁護団で議論して「ここで闘わなければ歴史に禍根を残す」として裁判長を忌避することを決めました。その前哨戦が昨年末から始まっています。
 このあと、海渡雄一弁護士から報告があると思いますが、弁護団では昨年末から高裁の裁判長に対して自ら担当を降りるよう迫っています。裁判長は、今日の集会のこと、そして記者会見の予定を聞いて「圧を感じますね」と言い、海渡弁護士は「我々も命がけでやっていますから」と宣戦布告してきています。
 1月31日までのこの一週間が裁判長の進退をめぐる攻防になるかと思いますが、第1回口頭弁論期日の冒頭から「裁判長の忌避申立」となる予定です。その申立書は茨城の弁護団若手ホープの鈴木裕也弁護士が書いてくれました。裁判長へ自ら辞退するよう勧告した勧告書も鈴木さんが書いてくれましたが、それを裁判長はそれを読んで相当神経質になっているようです。
 忌避申立がたとえ却下されようとも、この緒戦の戦いなしにはその後の裁判もありません。一審水戸地裁でも「原告の弁論を認めない。誰が弁論するかは裁判長が決める」とする裁判長との闘いを経て、それを認めさせて一審判決を得ています。

〇控訴審でも、被害者となる住民をしっかり見させないといけません。そうでないと先日の刑事裁判のように被害者の存在がまったく不在の判決を書かれてしまいます。
 控訴審では事故の蓋然性だけでなく、被害を受ける地元茨城そして広範な首都圏の住民原告が法廷に立って裁判長に、「しっかり私たちの目を見て、私たちの訴えに正面から応えろ」と迫り続けることが大事だと思います。毎回傍聴席を埋めて頂き、裁判官へ多くの人の目が集まっているという圧迫をかけなければなりません。東電株代訴訟のように現地に裁判官を引き出させないといけません。自らの目でどうなるかを確かめることなく判決を書かせないようにしなければなりません。どうかこれから傍聴に集まっていただけますよう支援をお願いいたします。

〇水戸地裁判決はもうひとつの示唆を私たちに与えています。
 実効性ある避難計画と体制がなければ運転してはならないということは、地域の安全なくらしを守るために、周辺住民が自治体と共に国策に対して抵抗するということです。
 東海村の村上達也さんが村長時代に残してくださった地元6市村の首長懇談会による新安全協定にもとづく拒否権・不同意権を住民が支えながら、94万人もの住民避難など到底無理だという運動を自治体と共に作り上げること、地元住民と自治体がどこまで踏ん張れるかです。国策に対して自治体も巻き込んで住民自治・自己決定権で対抗する陣形をつくらなければなりません。
 しかも、94万人避難は関東圏一帯に避難先が確保できなければならず、避難先さえ被災する、被ばくする可能性がある以上、避難先自治体の住民の運動で受入れ困難という住民運動で包囲できるはずです。避難の計画策定など困難であること、緊急時対応のとりまとめを阻止する住民運動がいっそう重要になってきます。さらに福島原発事故で実際に想定された首都まで汚染されるという事態を考えれば、放射能による首都壊滅を首都の住民で防げるかという問題です。

〇GX実行会議を踏まえた原子力閣僚会議の行動指針の冒頭は「再稼働への総力結集」です。しかし彼らも「もうこのタイミングしかチャンスはない」として焦っています。電力資本も赤字で窮しており、我々も年を重ねますが、彼らも後につづく人材が不足しています。だからこそ見境無く司法にまで人事介入して水戸地裁判決をひっくり返そうとしています。
 ならばわたしたちも総力結集して、地域から中央政府、国会、そして司法まで含めた重層的な闘いを積み上げる必要があります。

〇日本原電は2024年9月に対策工事を終えて再稼働を目論んでいます。
 GX実行会議・原子力閣僚会議が指示するように、地元に対しては避難計画を作らせる「地域支援チーム」が国から送り込まれます。自治体職員を対象に「理解促進」の名の下に徹底した介入・教育がはじまります。自治体の首長・幹部・管理職・担当には定期的な意見交換の機会を持つと言っています。国が自治体といっしょに地域の将来像を作ってあげようと言っています。自治体の争奪戦にもなろうかと思います。国が政策説明会、対話型意見交換会、シンポジウムを仕掛けてきます。これに対抗する住民説明会、住民との対話説明会をこちらも仕掛けていかなければいけません。消極的でもいいから地元不同意を支えていけるように地元でも頑張ります。最悪2024年中に地元が切り崩された場合は、新たな原告を募って水戸地裁に仮処分申立も検討しています。
 今日までのパブコメによる国民意見と共に、中央では明日からの国会で「束ね法案」をめぐる論戦にも注目して声をあげてゆきましょう。
 言うまでもなく、裁判は決して「最後の砦」ではなく、運動のひとつ、脱原発の国民戦線の一翼です。みんなの闘いを重層的に連携させて結集して、あれやこれやの工夫をして粘り強く闘ってゆきましょう。それが次の世代に対する歴史の中での私たちの役割だと思います。
 みんなで頑張りましょう。今日はよろしくお願いいたします。
 
 原告団決意表明

 東海第二原発運転差止訴訟原告団世話人・東京原告代表  星野芳久


 東京の原告の星野です。控訴審を闘う決意を表明いたします。
 2012年、水戸地裁に提訴してから10年が経ちました。この間に、弁護団の矢田部理弁護士はじめ、少なくない原告の方々が他界されました。この場で、あらためて、哀悼の意を表するとともに、鬼籍に入られた方々の、「原発はなくせ!」の願いも含めて控訴審を全力で闘っていきたいと思います。
 さて、水戸地裁判決は、原発30キロ圏内の原告79人については「人格権が奪われる具体的危険がある」と認定し、東海第2原発は運転してはならないと命じました。被告日本原電は、この判決をまともに検討する姿勢すらみせず、即刻控訴してきました。
 そこで、請求が却下された30キロ圏外の原告120人は、日本原電を控訴し、被控訴原告とともに一体になって控訴審を闘うことにしました。
 水戸地裁判決の、法的な論理の組み立て、その画期的な意義については、鈴木裕也弁護士からお話しがなされました。この判決の中身を、控訴審において司法の判断として定着させる、これが高裁での闘いであり、課題です。
 東京高裁には、すでに、民事訴訟における法律論だけで逆転判決を書かせないようにするために、弁護団の大変な尽力で、争点を再度全面展開した、380ページにも及ぶ控訴理由書が出されています。
 日本原電は、その控訴理由書で、「第5層の避難計画も現在進捗している」、「段階的避難について住民の理解と協力を得ることは実現不可能なことではない」などと能天気に述べています。原告団は、「準備書面」をもって、茨城県広域避難計画は極めて杜撰であり、破綻していることを実証し、突きつけています。
 私たちは、一審でも意識して主張してきた、福島第1原発事故による甚大な住民被害の実態を認識し、その教訓を踏まえ、原発災害による人権侵害は、「避難ができるか否か」にとどまらず、ふるさとがなくなる、人間の生活が根底から破壊され、侵害されることを原告が法廷に立って訴えます。東海第2原発は、4400万人が暮らす首都圏に立地している危険な老朽原発であることに重ねて注意を喚起します。そして、「第5層防護とはなにか」を深める審理を実現し、一審判決を守っていきます。1層から4層にかかわる争点も整理し、改めて主張を展開し一審判決の意義を拡張していくべく闘っていきたいと思います。

 岸田政権は、脱炭素に便乗して、原発回帰の方針を決定しました。原発再稼働へ、「国が前面たってやっていく」と表明し、避難計画の策定に向け支援を強化する、国の職員による「地域支援チーム」を創設するなど打ち出しています。再稼働へむけて一段と国が介入し、抵抗する自治体や住民を切り崩してくるものと思います。
 裁判闘争とあわせて、地元はもとより、首都圏の自治体や住民運動、住民自治の闘いと結びながら、闘い進めていきたいと思います。
 日本原電は、東海第2原発の安全対策工事完了を来年9月としています。その前に使用前検査で燃料の装荷がなされます。原告団は、この燃料装荷を差し止める仮処分を、水戸地裁に申し立てることを確認しています。
 控訴審での、闘いが始まります。海渡弁護士から提起されましたが、まず司法との闘いから、になります。東海第2原発再稼働阻止、廃炉までともに頑張りましょう。
 最後にお願いです。一審の裁判も多くの皆さんの支援に支えられ、闘ってきました。東京高裁での闘い移るにあたって、応援していただける方を、新たに募っています。特に茨城県以外の首都圏の皆さんに、よろしくお願いしたいと思います。受付に賛同の申し込み用紙と郵便振り込み用紙があります。ぜひご協力いただきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

鈴木裕也弁護士の講演「水戸地裁判決の判断の維持・定着に向けて」

  永谷裁判長問題(東京高裁裁判勝利!決起集会=2023年1月22日の報道などから)